只今4:00。朝に弱い体と格闘中。さっきまで鳴っていた目覚まし時計の音で、家族が起きていないかすごく不安だ。
「ん~!」
やっとベッドから降り、部屋の明りを付け慣れてない明るさに目を窄める。クローゼットから服を取り出し着替えると、電気を消し部屋から出て行った。
家を出ると、日中とは違って少し涼しい空気が漂っていた。一つ深呼吸をし、目的の場所へ向かう。その目的の場所からは、光が放たれていて薄暗いこの時間の町では浮きだって見える。
「おはようございます。」
「おぉ!よく来たな!靖和都くん。」
「今日からよろしくお願いします。」
「いーよ、いーよ!そんな挨拶!俺も靖和都くんの両親にはお世話になってるんだからよ!」
「はい・・。」
この威勢のいいおじさんは新聞屋の社長的存在の松井さんだ。
「じゃあ昨日言ったとおりだから。」
「分かりました。」
俺は、今日から新聞配達を手伝うことにした。もちろん金を稼ぐために。理由は、紗佳乃への誕生日プレゼントを買うため。
俺たちは、来月16歳の誕生日を迎える。それで紗佳乃は、漫画の影響で『16歳の誕生日に赤いチュイーリップの花束がほしい』と言い出したのだ。花束は意外に高い。そう言われたのは1週間前で、俺の使いすぎたお小遣いの余りでは、到底足りないのだ。そこで、考えた結果、バイトをやろうということになった。
登下校できなくて紗佳乃はショックを受けていたかも知れないが、彼女のためなのだから、仕方がないだろう。多分。
配達途中、ふと昨日の出来事を思い出した。
「ただいま。」
帰りが遅かった紗佳乃を玄関で迎えると、隣には和也が居た。
そこまで心配する時間ではなかったが、ここまで遅く帰ってきたことがなかったから、心配になった。そこで帰ってきた紗佳乃の隣には、和也。そのことによりもっと心配になった。
和也は俺の親友だ。俺のことを他の誰よりも理解してくれていると思う。だが、紗佳乃のことになったら別だ。俺だからわかる。和也は紗佳乃のことが好きだ。
和也を外に呼んで、聞いてみた。
「何してたんだ?」
何か独占欲強い奴みたいで自分に嫌気がさしたが(ある意味シスコン)、こうするしかない。
「居残りさせられてたんだよ。」
「もしかして・・笹井?」
「そうそう。紗佳乃のお陰で足腰痛いぜ。」
「ご愁傷さまだな。・・で。何の居残り?」
「資料室でプリント整理だよ。」
・・・・・・・。まさか。
「それって・・」
「まさかの2人きり。ご愁傷さまだな。靖和都。」
「何も・・なかったよな?」
「なかったとはいえねぇな。じゃあまた明日な。」
「ちょっ!何だよそれっ!」
「あ。そういえば明日から紗佳乃と一緒に登下校しないんだって?じゃあ俺が一緒に行こうかな?」
「だっ駄目だ!」
「しーらんぺ。」
そういい残して和也は自分の家に帰っていった。
「くそぉ・・・。」
自分ながら馬鹿なことをしたと思った。
登校できない理由は、二度寝したくて、遅く学校をでようと思ったからだ。そして、下校できない理由はバイトを入れたから。
「はぁ・・・。」
俺がいない間、和也に取られちゃ意味ねぇじゃんか。ぐだぐだ考えているうちに、最後の家をまわり終えた。松井さんに終了を告げると、家に帰った。
気付かれないように部屋に戻り、ベッドに身を委ねてため息をつく。もう覚めきってしまった目では、二度寝を出来ないことに気付き、嘲笑をした。俺は空回りしてばっかだな。それをいつも止めてくれたのが、紗佳乃だったのかも知れない。
「靖和都。」
体がビクついた。誰とも間違えるはずがない、紗佳乃が俺を呼んだから。
体を起きあげ、紗佳乃のほうをに体を向け、ベッドに座った。
「紗佳乃・・。どうした?」
少し、心臓が高鳴ってるのを感じる。
「靖和都こそ。4:00に起きて何してたの?」
「知ってたのか。」
「そりゃあ。姉弟だし。わかるんだよ。」
その『きょうだい』という言葉にグサッときた。
「嘘だよ。靖和都の目覚ましの音が大きいだけ。あ・・でも、お母さんたちには聞こえてないと思う。」
「そっか。」
『嘘だよ』と言ってくれたことが俺には嬉しかった。俺たちは姉弟じゃないと言ってくれたみたいで。
「で?何してたの。」
「ジョギング・・だよ。」
嘘を吐いた。でも、今バレてしまっては困るのだ。
紗佳乃は、それを疑う様子も無く、『そっか』と言って、俺の首筋を撫でた。それによって、俺の顔は一気に熱くなった。
「ホントだ。汗かいてる。」
紗佳乃にとっては何でもない行動なのだろうけど、俺にとっては心臓が危なくなる行動だ。
ゴチャゴチャ頭の中で考えていると、膝に乗っけてた手に何か冷たいものを感じた。見上げると、眉間に皺を寄せて、泣いている紗佳乃の顔。
「ど・・どうした?」
「どうして、登下校できないの?」
「え。」
「私、何かした?嫌なこと言っちゃった?」
「違うよ。」
ある意味そうだけど。
「紗佳乃は悪くない。それに、ずっとじゃないから。」
「え?」
「一ヶ月だけだから。な?それだったらいいだろ?」
「うん。」
「それに、夏休みかぶってるから後ちょっとしか学校いかねぇし。」
「そっか・・。よかった。」
何でそんなに嬉しがるのだろう。期待しちまうじゃねぇか。
「そんなに嬉しいか?」
「うん。そりゃあね!だって靖和都のこと・・(あっヤバ)」
「・・・・・?」
「大事だし。ね。」
・・・好き・・とか言ってくれるわけねぇよな。
『ガタっ』
下から物音がした。
母さん起きたのか・・。
「紗佳乃。部屋に戻れ。」
「え・・あ、うん。」
「あ。あと、登校は出来る、かも。」
「うん!」
こうして、紗佳乃は部屋から出て行った。笑顔と喪失感を残して。
あとがき
何か更新しすぎですよね。
でも、早く書かないとどんなストーリーを考えていたか忘れるんですよ。
大目にみてください。(更新しすぎたことと、グダグダな文を)
今回は靖和都視点で書きました。
わかります・・よね?
では。この辺で。
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