気付いたら優志の家から駈け出していた。後ろから聞こえる優志の声を無視して、無我夢中で走った。徒歩2分でいつも通る場所を、たった30秒でたどり着く。多少息を切らしながら、自分の部屋に入り、押入れを探る。
「失くしたか・・・。」
数時間経っても、それは見つからなかった。声を出したことで少し冷静になり、優志に悪いことしたと思った。ふと携帯みるとをメール着信を示すランプがチカチカと光っている。ぐちゃぐちゃになった自分の周りから抜け出そうとすると
“カシャン――”
という音が背後からして振り返ると「それ」はあった。
「あった・・・!」
少し喜びつつ、不安になりながらそれを手に取る。紛れもない、5歳の誕生日に貰ったスイッチ。黄色が土台となっていて、ネジが青く、ボタンとなる部分が赤い。はたから見ればただのおもちゃだが、おじいちゃんは・・・。あのとき何て言ってたんだろうか。
「押したら・・わかるのか?」
そう思って、スイッチに手をかけた。心臓が脈を打つのが伝わるくらい、鼓動が速まり、手に汗が湧き出る。緊張しすぎて、押せそうもない。
カウントダウンをしよう。
頭に過ぎり、心を落ち着け数を数える。
10・・9・・8・・7・・6・・5・・4・・・3・・・・2・・・・・1・・・・・・・・・・
“ピンポーンピンポーン”
「うわぁ!!!」
思わず声を出してしまった。あと一秒だったのに。
邪魔されたことに少し不機嫌になりながら、スイッチを持ったまま玄関に行く。
「はい・・。」
優志かな?とか考えながら出て、顔をあげるとあり得ない人が立っていた。
「元気にしとったか?翔太。」
「じ・・・・・じーちゃん。」
本気でびっくりしたとき人は本当にどもるんだなーとか冷静に考えながら、まじまじとおじいちゃんの顔を見る。本物だ。
「やっと翔太がスイッチを押してくれたから戻ってきたんだぞ。」
マンガなら「プン」とでも効果音がつきそうな顔でおじいちゃんは言った。それより、おじいちゃんの意味深発言。どういうことだ?
「どういうことだよ・・?」
「わかんないのか?まぁ、明日にでもなればわかるんじゃないかの。」
「いや、わかんないし。」
「・・・しょうがない。取りあえず家に入ろうか。」
「折れるの早いな。」
ボソッと言うと、おじいちゃんに少し睨まれる。少し焦っておじいちゃんについて行って、家の中に入り、奥へと進む。どうやら、おじいちゃんは自室へと向かっているようだ。部屋の中に入ると、机が中央に置いてあり、他にタンスしか置いてない殺風景な部屋が広がっていた。おじいちゃんがいなくなったままの風景。
「・・・。」
「母さんがこまめに掃除してるからな。」
「そうかそうか。」
おじいちゃんは少し笑って机のそばに座った。俺も、その向かい側に座る。
「さて、話すか。」
「あぁ。」
少し緊張しながら、手にグッと力を入れる。どんな話が聞けるのだろうか。
「そのスイッチ。押すとどんなことが起こると思う。」
いきなりの質問に戸惑う。正直・・
「わからない。」
「そうか。それはな
大切な人が目の前に一生現れなくするスイッチ
なんだよ。」
「え?じゃあ何でおじいちゃんは「翔太がスイッチを押したからだよ。」
いつ?記憶を思いめぐらしいつだったか考える。
そして答えを見つけた。
「落としたとき・・だ。」
「もう一度押すとその人は帰ってくる。しかし再び違う大切な人がいなくなる。」
「誰だよ・・・。」
「心に手をあてて考えるんだな。」
そう言って、おじいちゃんは部屋を出て行った。部屋に一人残された俺は、自分の部屋に行くことにした。
部屋に入るとチカチカ光っているものが見える。携帯だ。
“新着メール 2件”
“Fm 永田優志
Sub <件名なし>
しょーたどした⊂(^ω^)⊃?”
“Fm 永田優志
Sub やばい・・
俺、この町にいれねぇ。
今日で会うの最後だ・・。
こんな形でごめんな。
また会おう。”
「なんだそれ・・」
何でだよ!?って何度も頭で繰り返し、いつの間に家を駈け出していた。デジャヴだとか思って、そんなこと考えてる暇もないんだけど、こうしてる間にわかったことは優志は俺の中で大切な人なんだと改めて感じたこと。アイツなしの人生なんてありえねぇ。アイツ以上のダチなんていねぇんだ。
いつもの本屋にいくと、まだ営業時間なのに閉まっていた。
「何でいきなり!!何でスイッチなんかくれたんだ!!何で落としちまったんだ!?
優志を返してくれよ!!バカヤローーーーッ!!!」
「ばかやろーはお前だ翔太。」
大声で叫んでいると、聞きなれた声が聞こえる。視線をそっちに向けると優志とおじいちゃんが立っていた。
「何で・・・。」
二人は顔を見合わせて笑い、看板を後ろから出し。
「ドッキリ大成功!!」
と言った。
「は?」
「11年ごしのドッキリ。いやー、優志君のおかげだよ。」
「いやいやー。こんなにコイツが俺のこと好きだったとは!それを知れたのはおじいさんのおかげです。」
「何といっても、この騙されかたはなー。」
「有り得ないっすよね(ワラ」
おい。この二人俺の存在忘れてねぇか?
「ていうか・・騙したのお前らだろっ!!!!」
この日から数日間、俺は二人と口をきかなかった。
まー、大切なのはかわりないけどな。
きっとこれから先も。
あとがき
めちゃくちゃ適当ぽいけど
ずっと考えてたシナリオ。
恋愛じゃなくて友情が書きたかった。
いそいで書いたからぐだぐだだけど
楽しかった(自己満)
ちなみに
私も女ばれのマネージャーになりました