今・・何時だろ?俺がバイトから帰ってきて、紗佳乃と母さんと喋って・・・。バイト終わったの何時なんだっけか。頭が回らない。つーか、何で俺はここにいるんだろ。
「靖和都。何ボーっとしてんだよ。」
はっと気がつくと、和也が間近にいた。その隣にいる紗佳乃は俯いている。
「別に。てか用事って何?」
紗佳乃のことが気になるが、話をふった。いや・・やっぱ、紗佳乃の方を優先した方がよかったかな。
いろいろな事を考えていると、和也が話し出した。
「俺さ、紗佳乃のことが好きなんだよね。」
「何を今更。」
俺は少し馬鹿にしたように言った。そして、紗佳乃の方を見てみると、何も動じていない・・?
俺が、それに気づいたことを和也はわかったのか、話を続けた。
「昨日さ、紗佳乃暗くなかった?」
「え?」
そういえば暗かった。その理由ってもしかして・・。
「俺さ、昨日紗佳乃にキスしちゃったんだよね。」
「はぁ!?」
もしかして・・・と思っていた考えとは違って驚いたが、驚きだけじゃない。
「無理やりとかじゃないよな?」
そう。怒りがふつふつと沸き起こってきた。というか、やきもちみたいな。
「そうに決まってんだろ。」
「テメェ!!!!!」
「好きな子と二人きりになればその気にもなるだろ。」
あまりにも軽々しく言っていたので、本当に俺の親友なのかと思えてきた。
このとき、頭が回らなくて分からなかったんだ。和也の優しさに。
「ふざけんな!!!!!」
そう言いながら俺は、和也を殴った。
「ってぇ・・・。」
ずっと俯いていた紗佳乃が、やっと前を向いて、耳から何かを抜いた。
「何やってんの!?靖和都!!!」
「何って・・・紗佳乃は嫌じゃねぇのかよ!?」
「あー。待て靖和都。」
「あ?」
「紗佳乃は今まで何も聞いてなかったんだよ。約束破るとは思わなかったからなぁ。」
何のことかさっぱりわからなくて、険しい顔のままでいると紗佳乃がむっとした顔で俺に向かってきた。
「和也に謝りな!」
「え・・だって」
「だってじゃないわ!!!はよ謝れっつってんだろ!!!」
「いいんだよ。これは。」
和也が間に入ってそう言うと、更にムカついてきた。
「つーかお前がわりぃんだろ!!俺が紗佳乃のことす・・・」
「す?」
ヤバい・・・。どうしよう。何でこういうときに限って頭がまわんねぇんだよ。
もう・・いいか。
「好きって知ってて・・・。」
紗佳乃を見ると目を見開いていた。
「でも、姉弟だし・・・。無理だよな。和也、これがしたかったのか?」
「は?お前何言ってんの?紗佳乃の気持ち聞いてないだろ。」
「聞かなくても同じだろ?なぁ、紗佳乃。」
「・・・・・よ。」
「え?」
「同じじゃない!好きだもん!」
え?嘘だろ。
「嘘だ・・。」
「嘘じゃない。でも・・・(これ・・言っていいのかな。・・・うーん。よしっ!)」
でも・・?あー、やっぱ姉弟だから
「私たち・・・姉弟じゃないんだ。」
「「え?!」」
そこで、ガチャっという音がして、そっちの方を見てみると母さんが立っていた。
「あ。お母さん・・・聞いてた?」
「うん。ごめんね。ていうか・・紗佳乃。」
「はいっ!(やばい!言っちゃ悪かったか・・・。)」
「まだ靖和都に言ってなかったんだ。」
「え?言ってよかったの!?だってあの時私にだけに話すからてっきり。」
「私だけって・・・あぁ。あの時は靖和都、家にいなかったときだったじゃない。」
「だからだよ!聞かれちゃマズイことだと思ったのっ!」
なんだ?この会話。内容がよく掴めない。
「2人とも仲いいからすぐ話すと思ったし、あの時は流れで話しただけだもん!」
「もん!じゃない!!」
「抑えろよ。紗佳乃。」
「靖和都・・・。」
ちらっと和也の方を見ると、ポカーンとしていた。
「か・・和也。」
「え!あ!なんかついてけなくて。てか、俺の作戦のお陰なんだからな!紗佳乃に耳腺つけろって言ったの俺だし、このストーリー考えたのも俺だし、ウッ、靖和都にっ殴られたのも俺だし、ズズッ、紗佳乃に振られたのも俺だしっ・・」
「泣くなって。ごめん。気付かなくて・・・。」
「な・・っ・・泣いてねぇよ!!」
和也、疑ってごめん。俺、調子のいい奴だけど、お前は親友だ。
「和也・・私からもごめん。今日といい、今といい、辛い思いさせてばっかだね。」
「ていうか、何で俺たちの手伝いなんかしたんだよ。」
和也は、は?という顔をして、涙を拭った。
「まぁ、俺は2人の間に入る隙間がなかったってことかな。それに、俺、靖和都も大事だし。」
「か・・和也・・・。」
やばい。俺も泣きそうだし。
「いい友達持ったのね。」
母さんがそう言った。うん。そうだな・・・。
「今日のこと、お父さんに言っちゃお♪」
やっぱなぁって、えぇ!?
「え!?反対しないの!!?」
「別にする必要ないじゃない。血が繋がってる訳じゃないんだし。離縁しちゃえばいい話だし!」
そう簡単に離縁とかいわないでくれよ・・・。
「離縁しても大事な息子だからね。」
「う・・・うん!」
「何か・・・靖和都って幸せ者じゃない?」
「だよなー。俺なんて・・・」
「ごめんごめん。ほんと・・・ありがとな。」
「世話がやける奴。」
「だね。」
ほんと幸せ者だ。
世界一。
宇宙一。
「ありがとう。」
何度でもいうよ。
この温かい人たちへ。
大好きな君へ。
何度も。何度も。
ありがとう。
―3週間後
「靖和都!早くっ!」
「もうちょっと寝させてよ・・・寝不足なんだからさ・・・。」
「バイトなんかしてるからでしょ?やめればいいじゃん。」
紗佳乃は知らないもんな。
「今日な・・・。」
「?・・・ていうか!!今日は遊ぶ約束してるでしょ!?夏休み始まってもゴロゴロしてるだけだったし・・・。」
「そうだけど・・・。よしっ!起きるかっ!」
「そうそう!!!」
明日は8月1日。今日はバイトが終わる日。そして8月3日は・・・。
―3日後
「誕生日おめでとう。」
「え!!まじで!?」
赤いチューリップの花束を見て、紗佳乃が言った。
「まじでって・・・。」
嬉しそうに紗佳乃が笑っている。幸せだ。
すると、紗佳乃が一本抜き取って、俺に渡した。
「え?」
「靖和都に。」
「何でだよ。俺が渡したものなのに。」
「そうだけど・・・。赤いチューリップの花言葉・・知ってる?」
「知らない・・。」
「愛の告白。」
あい・・のこく・・はく。
「私、靖和都のこと大好きだから。」
「・・・俺も。紗佳乃が大好きだよ。」
どんどん・・顔が近付いて・・
「あー、邪魔。ってか、道端で教育に悪いことしないでくださーい。」
「和也!!」
邪魔が入ってしまった・・・。でも・・俺にとってはこれが幸せなんだ。
「ありがとな。」
「はぁ!?何だよ。気持ちわりっ!」
「別に?」
3人で笑いあう。
来年も再来年も10年後もこうだといいな。
幸せがつづいてるといいな。
《終》
あとがき
やっと終わりました。
微妙な終わり方だけど許してください。
ありきたりな話でごめんなさい。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!
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