今日はなんだか、みんなの視線が痛い日みたいだ。
何故かと言うと、朝、私はヒロと登校してしまった。そして・・・
「ユナ!!一緒に帰ろう」
「・・・」
帰る私宅をしている私の前に、ヒロが立っていて。
しかも、一緒に帰ろうと誘われてしまったのだ。
どうしてこんなことが続くんだろう。
「・・・・・・ユナ?」
「え?あ・・・ごめん。私委員会の仕事あるんだった・・・」
「図書当番の?」
「そっそう。だから一緒に帰れないの」
「んー。そっか・・・仕方ないよな!!」
嘘。
嘘ついた、私。
ヒロと一緒に帰りたくないんじゃなくて、寧ろ一緒に帰りたいわけで・・・
だけど、素直になれなくて・・・
みんなの視線ばかり気にして、私は自分の気持ちを押し殺してる。
「あ、ユナ」
「え?」
「今日さ、母さんがユナから写真貰うって・・・言ってたんだけど、何の写真?」
「・・・あぁ。・・・・・・・・これ。」
朝ヒロに会ったから完全に頭に無かった。
お母さんに渡せって言われてたのに。
白い封筒をヒロは私の手から取った。
そして中身を見ようとしている。
耐えられない。
今思えば、この教室には私とヒロの2人だけ。通りで静かだと思ったわけだ。
静かって、すごく静寂なわけじゃなくて、教室が静まり返ってるだけ。
運動場からは、野球部とサッカー部の大声が聞こえてくるから。
「ヒロ、ごめん。私行くねっ」
「あ、ユナ!!!!!」
私はとうとう駆け出してしまった。
だって、本当に、本当に耐えられなかった。
静まり返った2人だけの教室と、封筒を一生懸命開けるヒロの綺麗な顔と・・・
私場違いじゃないかってくらい、浮いてたと思う。
「・・・・・・もうっ」
走って、走って、走って。
着いたのは行き止まり。
図書当番だって嘘ついて、辿り着いたのは行き止まり。
当番は昨日だったっつーの。
いまさら考えても遅いけどさ・・・・・・
「・・・うっ」
壁に向かって、何してるんだ、私は。壁に向かって、何泣いてるんだ、私は。
バカみたいじゃないか。
ついにはしゃがみ込んでしまった。もう、限界だよ。
ずっとヒロへの気持ちを押さえ込んできた。仕舞って来た。
小学校の頃は、ただ、好きだった。だけど、中学生になって、どんどん年を重ねるたびに、どうしようもなく・・・好きで好きでたまらなくなっていった。
私は、ヒロを忘れるためなら、友達にだって協力した。
『ユナ、私ね、ヒロくんのことすきなのっ!!協力してくれる?・・・だって、ただの幼馴染なんでしょ?』
ヒロのことを好きになった周りの子達は、必ず私にこう言って来た。
羨ましいって、思った。私もこんな風に素直になれたらよかったのに。そうすれば、ここまで引きずることは、きっとなかったんだ。
そう考えると、涙がどんどん溢れてきて、拭っても拭っても意味無いくらい、止まらなかった。
「ごめ・・・ごめんねヒロぉ・・・・・・」
「私・・・ヒロのこと好き・・・大好きなのに・・・・・・素直になれなくて・・・ヒロに嫌われる・・・のが怖くて・・・」
とうとう私は、自分の気持ちをとどめることが出来ずに口から出してしまっていた。
どれだけ、溜まってたんだろう。泣きながら、ずっと。
多分、私が何を言っているか聞き取れないだろう、誰も。
「ヒロ・・・好き、だいすき・・・・・・」
「ユナ・・・それ、本当?」
「!?」
不意に聞こえた声。
良く知ってる。毎日聞いてる。毎日探してる、優しい声。
「・・・ひ・・・ろ?」
「うん。」
「なんで・・・?」
「知ってた。ユナが図書当番じゃないってこと。昨日だったろ?」
「・・・・・・ごめ、ん」
知ってたのに、ヒロは知らないふりをしてくれてたんだ。
だけど、どうして・・・
「・・・で、今の、本当?」
「・・・・・・え?」
「その・・・おっ俺のこと・・・すきって・・・・・・」
「・・・・・・」
しっかり聞いてたんだ・・・いつから居たんだろう。
私は恥ずかしくなって、顔を伏せてしまった。
「・・・ほんと、」
「あ~あ!!!・・・俺から言おうと思ってたのに」
「え」
素直に、今度は素直に言った、と思ったら、ヒロからの衝撃の一言。
電流が、走った・・・気がした。
「俺も、ユナ・・・・のこと、すき・・・だから」
「えぇ!!?」
「俺からずっと告白しようとしてたのにっ!!!・・・お前、いつも俺が話しかけると・・・逃げるから」
「あ・・・」
「嫌われてるのか、ってずっと思ってたんだけど・・・そうじゃなくて今安心したっ」
ばか。私って本当にばか。天性のばかなのかしら。
ヒロを避けてたのは、単なる私の我が儘で、それによって、ヒロは傷ついてた・・・わけで?
「その・・・ごめんね、ひろ」
「ん。」
「ヒロが私のこと好きで居てくれたんだったら、もっと早く言えばよかった・・・。そしたらこんなに・・・」
悩まなくてすんだのに。
最初から、素直になっておくべきだった・・・・・・
「俺も、ごめん。ユナを泣かせるつもりじゃ、なかった・・・。もっと素直になるべきだったな!!!」
「私もだよ」
「じゃ、俺たち、これから素直になれるようにしようぜ?」
「・・・一緒に?」
「当たり前だっ!!・・・・・・よろしく、な?」
「こちらこそ・・・よろしくっ」
あんなに悩んでたの、ばかみたいだ。やっぱり私は、天性のばかみたい。
今も、ばかだけど、今はヒロばかだよ。
ヒロのこと、大好きで、好きで好きでたまらないもん。
「ユナ、手っ」
「ん」
私たちは、夕日で赤く染まる校舎を背に、手を握って歩き出した。
複雑に絡んでた心の方程式は、もう解けてた。
きっと、ヒロと一緒に居る限り、絡まることも、複雑になることもない。
だけど、もう一つ方程式が出来たよ。
ヒロと、私の、一生解けない方程式が・・・・・・____________________。
__________________________________________________________________________
ウワァァァァァァァァァァァァァアアアア
なんじゃ、こりゃぁぁ・・・
ながながながと読んでくれて感謝っすよ。
PR