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Ⅲ.
私は、たった一人の世界をさまよい歩いていた。
ひとり・・・・・。
私のほか、誰一人としていない世界は、まるで時が止まったかのように静かだった。
町からはいっさいの雑音が消え、心なしか今まで灰色だった空はすっきりと澄んだように見えた。
綺麗だ――。
これこそが、私の夢見ていた世界。誰もいない、わたしの思うがままの世界。無音の中にうずまり、余計なものが一切ない景色に見とれながら、私はしばらくその“新しい世界”に浸っていた。
それから10日が経った。相変わらず世界は静かだった。人間がいなくなった世界は日に日に美しくなっていく。
誰もいないところに10日もいようものなら、気が狂ってもおかしくないはずなのに、不思議と私は、まったく平気だった。
朝起きて、服を着替えて、朝食を食べ、時間になったら、学校へ行く。
誰もいないはずなのに、どうしてか、いつもと同じ毎日を送っていた。学校へ行ってももちろん無人。授業がないのだから行く必要はないのだけれど、何となく、いつもと同じ生活をしなければならない気がした。
その人が現れたのは、世界から人が消えて、28日目のことだった。