いよいよ最終話です。今回もやや失敗作のような気がしないでもない!でもテスト終わったんで書きます。・・・そう!私たちを苦しめ続けてきた、教師たちの醜き陰謀である、あの恐怖のテストが今日、終わったのです!イエーッ!・・・と、ちょっとした幸福感に浸っていられるのは今日のうち!明日には“国・理・社”が帰ってくる!だから私は書く!小説を!
・・・何が言いたいんだか意味が分からない・・・。
5.
次の日の朝起きたら、父はいなくなっていた。すべては、予定通りだった。どこへ行ったのか、私は分からない。多分、母も知らないんだろう。もう、お父さんとは、会うことも話すことも、手紙を書くことさえもできないんだろうな。荷物をまとめながら、部屋の中をぐるりと見渡す。ごくごく普通の、マンションの一室。今までずっと、私たち三人はここで暮らしてきた。今日までの私たち家族のすべてを、この壁や床が吸い取ってきた。
壁に手を当ててみる。明日から、この部屋はどうなるんだろう。空っぽになるのかな。それとも、仲のいい家族が住むことになるのかな。どちらにしても、私は満足だった。
コートとマフラーを羽織り、玄関に向かった。
「お母さん、ちょっと、出かけてくるね」
「そう。いってらっしゃい」
外に出ると、空はやっぱり、曇っていた。
私はコンビニに寄ってから、図書館前の公園へ行った。
ベンチに座ってもう一度空を見上げた。昨日の夜のあの空は、いったい何だったのだろう。冷静に考えると、もしかしたらあれは、夢だったのかもしれない、と思えてくるのだった。
「やあやあこんにちは」
「あっ、高見さん」
彼は約束を覚えていた。何だかそのことがおかしくて、思わず笑ってしまった。
「何?いったい何なの?いいことでもあったか」
「いえ。ぜーんぜん。昨日は人生で最悪の日だったかも知れません」
「何だ。で、言えた?」
「はい。バッチリです」
「そうか。それはよかった」
私は空に向かって白い息を吐いた。
「昨日は、妙に静かな夜でした。不自然なくらいに」
「そりゃきっと不自然だったんだな」
「は?」
「・・・何でもない。気にしないで」
「・・・そうですか。あっ、これ。昨日のお礼です。今日、バレンタインデーでしょう」
私はコンビニの袋に入った板チョコを高見さんに渡した。
「これはこれは・・・なんとお粗末な」
「ごめんなさい。包装する時間がなかったんです」
「・・・と言いますと?」
「私、今日引っ越すんです」
高見さんはコンビニ名が書かれた袋を見ながら「なるほど・・・」とつぶやいた。
「だから、本当はこんなことしてる場合じゃないんです。でも、やっぱりお礼は言わなきゃ、と思って」
「そりゃあどうも」
「じゃあ、おいしく食べてくださいね」
「ほんとのこと言うと、僕、甘いものだめなの!」
高見さんは私に聞こえるよう、大げさにひそひそ声で言った。
「だったら、無理にでも食べてください」
「そうしますわ」
「はい。それじゃあ、さようなら。短い間でしたが、お世話になりました。また気が向いたら、ここの図書館に来ますね」
「ぜひぜひ来てください。利用者少ないんですよ。できれば友達とかさそって」
「はい」
「じゃ、元気でね」
私はベンチから立ち上がり、公園を出た。
生きていると、ちょっと悲惨なできごとがある。心をえぐられるような苦しさを味わわなければいけないこともある。でも、それと同時に、助けだってちゃんとある。神様はすごい。もう少しで壊れそう、というところで助けを出す。それも、必ずすべての人に。助けが出ないうちはきっと、まだ自分が耐えられる領域なんだろう。
私は冬らしいその真っ白な空を目に焼き付けながら、家までの道をゆっくりと歩いていった。
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