落日には、一同平坦な道に足を踏み出せた。食料調達以前に食料が見あたらず、山越えをしたらしい。人に整備されている風もない山だったので、疲弊の色が滲んでいる。
優歌:「・・・・・・」
優斗:「そうだな、優歌の言う通り、少し早めの夕食にせぬか?」
俐:「まったく・・・・猫に日本語を通訳されるとはな」
咲:「いや、あの・・・・・通訳以前に喋ってないんですけどぉ?」
咲乃の呟きは俐羽の耳に届くことはなかった。美希は誰の指示を仰ぐこともなく、夕食の用意を始めている。どこからか漂う山菜の香りに、相沢家はいち早く反応した。
優麻:「用意しないと食べられないです」
4人で作る食事は早かった。瞬く間に鍋ができていった。
どうやらその辺りの切り株をくり抜いて作ったと思われる木製の鍋に、川の水が沸いている。煮られている野菜は美希が独断で採ったものだ。
聡:「おっ!旨そ・・・・う?」
匂いは旨そうで、中身も全て食用だ。しかし、調味料もなく、野菜のみという簡素さに、思わず疑問符をつけてしまう。
辺りに転がっている、人の顔ほどの木の実をくり抜き、器とすることにした。聡のペットの餌用にと買った大量のスプーンを握って、7人は思い思いに腰かけた。
皆:「いただきまーーーす」
まず、毒見とでも言わんばかりに、美希は聡の皿へ盛り付けた。聡が口にしない限り、他の人に配られないようだ。あまり見かけない山菜にたじろぐが、思い切って口にした。
聡:「ぐっ・・・・・・」
目を泳がせて、困惑の表情を浮かべる。あまり良い反応ではないため、食べていない人は固唾を飲んで見守った。再び聡が口を開く。
聡:「野菜の味しかしねぇ」
どっと嬌声があがった。毒ではないとわかったので、緊張が解けて笑顔が戻った。あたり前だ、という俐羽の言葉を聞き取る間にも、7人の胃は満たされていった。
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