遅くなりましたが、バレンタインでいを書かせてもらいます。ただ、私はキーボードを打つのが遅いんで、一気に書くと4~5時間くらい(または以上)かかってしまいそうなんですねえ。・・・ということで、今回は連載小説にします。一週間に一度くらい更新します。5話くらいで終わらせるつもりですが。
バレンタインでい、ということで、少しだけ恋愛もの?のつもりです。無理があるかもしれませんが。もし無理があったら、家族ものということにしておいてください。今までの魅世の作品には家族ものはありませんから。
では、もし時間がありましたら読んでください。
1.
とうとう明日か・・・。
窓の外には、灰色の空が広がり、冷たく張り詰めた空気が、道行く人の体を冷やしていた。
今日は二月十三日。明日の二月十四日はバレンタインデー。と同時に、私の家族がばらばらになる日でもある。そう、離婚ってやつだ。
お父さんとお母さんの仲が悪くなったのは、一年位前からだ。そのころは、ずっと寝たきりだったおばあちゃんが死んだり、お父さんの会社の経営状態が悪くなったりと、家族みんなが、へとへとに疲れていた。そのせいで、家の中では口論がたえなかった。私は、外出することが多くなった。何も言わずに友人の家に泊まり、何日も帰らないこともあった。そろそろ仲直りしたかな。そう思って私が家に戻ったとき、すでに家庭はめちゃくちゃになっていた。
あと少し。あと少しで、何も心配することはなくなるのだ。私はお母さんと一緒に実家へ戻る。そこにはお母さんのお兄さん夫婦もいるから、お金に困ることはない。とりあえず、大学卒業までは面倒を見てもらえる。この先には、充実した日々が待っているのだ。
あと少し。私はそう念じ、目を閉じた。
「どうして分かってくれないのよ!?」
「それはこっちのセリフだ!そっちこそどうなんだい!?」
また始まった。私は枕に顔をうずめる。父の怒鳴り声。ドンドンと乱暴に壁をたたく音。母の悲鳴。泣き叫ぶ声。もういやだ。胸が締め付けられるように苦しくなる。息ができなくなる。いつもの発作だ。
胸を押さえながら、必死で息をし、コートとマフラーを身に着ける。部屋のドアをそっと開け、忍び足で玄関に向かう。一刻も早くここから抜け出さなければ。
私はまだ、発作を止める方法を知らない。だからこうして逃げ、一時的に押さえているのだ。
家の外は、雨が降っていた。いや、違う。霙(みぞれ)だ。空を見上げながら、私は思う。雪か雨か、はっきりすればいいのに。中途半端な霙には、何となく親近感が持てた。と同時に、苛立ちを覚えた。
手に息を吹きかけながら、私は町中をさまよい続けた。そのうち、足がいうことをきかなくなり、人影のまばらな図書館前の公園のベンチに腰を下ろした。
公園にいた人たちは、次々と急ぎ足で去っていった。
いつの間にか、公園の中にいるのは私ひとりになっていた。
手が、足が、そして体中が冷えてゆく。心までもが、冷えきってしまいそうだった。今、凍ってしまったら、一生とけないような気がした。だけど、どうしたらいいのか、今の私には分からない。私はベンチの上にうずくまった。